
広告のインプレッション(表示回数)は多い。クリックもされている。でも、なぜか売上に繋がらない…。 多くのマーケターが直面するこの課題は、各施策の「点」の数字だけを見ていて、顧客の「流れ」を捉えられていないことが原因かもしれません。
この記事では、「インプレッション → クリック → 購入 → リピート」という顧客の行動フローに沿ってKPIを分析し、「どこで流れが滞っているのか?」というボトルネックを正確に見つけ出すための、新しいデータ分析の常識を解説します。
1. マーケティングの成果は「量」と「率」で見える化する

まず、マーケティング活動の全体像を捉えるための基本の型をご紹介します。それは、顧客の行動量を示す4つのKPIと、その繋がりを示す3つの「率」で考えることです。
顧客は、あなたの商品やサービスを[認知]し、[興味]を持ち、[行動]を起こし、そして[継続]してファンになっていきます。この流れを、以下のKPIで追いかけていきましょう。
- インプレッション → クリック → 購入・申込 → リピート
しかし、この「量」のKPIだけでは、課題の本質は見えません。そこで重要になるのが、それぞれのKPIを繋ぐ「率」の指標です。この「率」こそが、あなたのマーケティング施策の「質」を教えてくれます。
顧客の段階 | KPI(量) | KPI(質・率) | この「率」で分かること |
認知 → 興味 | インプレッション ↓ クリック | CTR(クリック率) = クリック数 ÷ 表示回数 | 広告やコンテンツの魅力度。 (デザインやキャッチコピーは刺さっているか?) |
興味 → 行動 | クリック ↓ 購入・申し込み | CVR(コンバージョン率) = 購入数 ÷ クリック数 | LPやサイトの説得力。 (ページのUI/UXは分かりやすいか?) |
行動 → 継続 | 購入・申し込み ↓ リピート | リピート率 / LTV = リピート購入者数 ÷ 総購入者数 | 商品やサービスの満足度。 (顧客は本当に満足してくれているか?) |
このフレームワークが、あなたのマーケティング活動のどこに問題があるのかを教えてくれる「診断ツール」になります。
2.【課題別】KPI分析から導く原因と改善アクション

ここからは、各「率」の指標が低い場合に、「何が原因で、何をすべきか」を具体的に解説します。
課題①:CTR(クリック率)が低い場合
これは、広告やコンテンツが「ユーザーの目に留まってはいるが、興味を引けていない」状態です。
- 考えられる原因
- ターゲットのズレ: 広告を配信しているオーディエンスが、そもそも商品に興味のない層である。
- クリエイティブの魅力不足: バナー画像や広告文が、ターゲットの心に響いていない。
- 訴求のミスマッチ: ユーザーが求めているメリット(例:価格の安さ)と、広告で打ち出している訴求(例:品質の高さ)がズレている。
- 改善アクション
- ターゲティングの見直し: 広告配信のオーディエンス設定(年齢、性別、興味関心など)を再検討する。
- クリエイティブのABテスト: 複数のパターンの画像やキャッチコピーを用意し、どの組み合わせが最もクリックされるかをテストする。
- 訴求の変更: ユーザーへの提供価値を見直し、最も響くであろうメッセージを前面に押し出す。
課題②:CVR(コンバージョン率)が低い場合
これは、せっかく興味を持ってサイトを訪れたユーザーが、「何らかの理由で購入や申し込みをためらっている」状態です。最も改善インパクトが大きい、最重要ポイントです。
- 考えられる原因
- メッセージの不一致: 広告で期待させた内容と、LP(ランディングページ)の内容が異なり、ユーザーが「騙された」と感じている。(メッセージマッチの失敗)
- UI/UXの問題: LPのデザインが分かりにくかったり、入力フォームが使いにくかったりして、ユーザーにストレスを与えている。
- オファーの弱さ: 「送料無料」「初回限定割引」といった、ユーザーの背中を押す最後の一押しが不足している。
- 信頼性の欠如: お客様の声や導入事例、権威ある第三者からの推薦などがなく、ユーザーが購入をためらっている。
- 改善アクション
- メッセージマッチの徹底: 広告の文言やデザインと、LPのそれを完全に一致させる。
- EFO(入力フォーム最適化): 入力項目を最小限に絞り、エラー表示を分かりやすくする。
- CTAの改善: ボタンの色や文言を、より行動を喚起するものにABテストする。
- 社会的証明の追加: お客様の声やレビュー、メディア掲載実績などを目立つ場所に配置する。
課題③:リピート率が低い場合
これは、一度は商品を購入してくれたものの、「顧客が満足せず、ファンになってくれていない」状態です。新規顧客の獲得コストが高騰する現代において、非常に深刻な問題です。
- 考えられる原因
- 商品・サービスへの不満: 届いた商品の質が期待以下だった、サポートの対応が悪かったなど、根本的な体験価値が低い。
- 購入後のコミュニケーション不足: 商品を届けた後、何のフォローもなく、顧客との関係が途切れてしまっている。
- 再購入のきっかけがない: 次に買う理由(新商品のお知らせ、限定クーポンなど)が提供されていない。
- 改善アクション
- 顧客満足度調査の実施: アンケートなどを実施し、商品やサービスに対する率直なフィードバックを得る。
- CRM(顧客関係管理)の導入: メルマガやLINEなどを活用し、購入後のサンクスレターや、顧客に役立つ情報を定期的に配信する。
- ロイヤルティプログラムの実施: リピート購入者限定の割引や、ポイント制度などを導入し、再購入を促す。
3. KPI分析を次のアクションに繋げるための3つのコツ
比較対象を持つ
数字は、それ単体では意味を持ちません。「過去の自社の数値」や「業界平均」といった比較対象があって初めて、その数字が良いのか悪いのかを客観的に判断できます。
ツールを賢く活用する
今回登場したKPIの多くは、GA4とGoogle広告を連携させることで、効率的に計測・分析できます。ツールを正しく設定し、データ計測の自動化を進めましょう。
GA4とGoogle広告の連携についてはこちらで解説しています。
完璧を目指さない
最初から全てのKPIを完璧に追いかける必要はありません。まずは自社のビジネスゴールに最も直結するCVRやCPAなど、1〜2つの最重要指標に絞って分析を始めるのが成功の秘訣です。
まとめ:KPI分析は、マーケティングの健康診断
今回ご紹介したフレームワークは、あなたのマーケティング活動の「健康診断」のようなものです。定期的に数値をチェックし、「どこに課題があるのか?」というボトルネックを特定することで、効果的な改善策(治療)を打つことができます。
「なんとなく」の施策から卒業し、データに基づいた意思決定で、ビジネスを確実に成長させていきましょう。